発車オーライっ! 2
気仙沼でBRTに乗り換え、約1時間20分。
一ノ関から3時間45分、東京駅からは6時間15分でようやく三陸鉄道南リアス線の始発駅、盛駅に到着。
心配した雨も盛(さかり)に着く頃にはすっかり上がり、どうにか原稿通り、景色を紹介するアナウンスが出来そうな様子。
ひと安心です♪
操車場のある運転司令室に案内され、ご挨拶して制服をお借りします。
ネームプレートには『車掌 平田』の文字が…か、感激ですっ!
それから乗務する列車の携帯時刻表と、反対の胸ポケットには首から下げたホイッスルが入っています。
小道具まで完璧に車掌さんのスタイルをさせて頂けるのは大変光栄なんですが、何せ僕の仕事は基本的に車内アナウンスのみ。
ホイッスルを吹く機会はありません。
2011年3月11日、司令室と車両基地のある盛にも腰の高さ位まで津波が押し寄せ、待機中の車両の動力部分が潮に浸かり、使用不能になってしまったそうです。
僕の後ろの車両が今回乗務する列車、震災後にデビューした新型車両です。
クウェート国から多大な支援を受けて導入されました。
運転席も最新設備、行き先表示や車内の温度管理など、タッチパネルでピッピッピ♪です。
この日は団体のお客さんがいらっしゃるという事で二両編成で運転。
えーっ!
団体さんが乗るのっ?
じぇじぇじぇっ!
何せほら、日帰りの突っ走りスケジュールですから、現地に着いたら大急ぎで打ち合わせして、チャチャッと着替えて、瞬く間に列車に案内され…、とにかく心の準備をする暇が無い。
しかも寝不足……♪
あ、そう……、団体さんが乗られるのね。
ビビる間もなくホームに入線します。
ところで今回の体験乗車、事前にお知らせ出来ずに申し訳ありませんでした。
車掌体験をぜひ皆さんにも見て頂きたかったのですが、現地までの交通事情や通常運行の列車を使用しての体験だった為、日常利用のお客さんにご迷惑が掛からない様にと、直前のお知らせに致しました。
ご理解頂けると幸いです。
さて、発車時刻には雲間から青空も顔を覗かせ、絶好の車掌体験日和に。
いよいよ三陸鉄道南リアス線、13時40分 盛発 釜石行き 普通列車 33.6キロ、9駅、約50分の旅の始まりでございます。
近頃は録音された車内アナウンスが主流ですが、それでも子供の頃から車掌さんのアナウンスは聞き慣れていた僕ですから、『まあ何とかなるんじゃないの?』なんて思っておりました。
が、聞くとやるとは大違い!
緊張するわ、口は渇くわ、足はふらつくわ、手元は揺れるわ、大変な騒ぎです。
列車が揺れるとやんわり噛んで、ブレーキが掛かるとほんわか噛んで……。
東京からいきなりやってきた素人車掌さんが噛みながら車内アナウンス。
あま噛み様は突然に…
終点、釜石に着く頃にはフニャフニャになっていました。
お客様が降りたら、ヘルメットを被って線路に降ります。
そこで車両点検。
メカ好きには堪りませんな。
連結部を間近に見たり、車体のお腹の部分を見学したり…。
三枚目の写真、36-702とありますが、36-700形の製造番号が2、つまり2番目に造られた車両という訳です。
因みに頭の36は三陸(サンリク)をもじって付けられた数字で、三陸鉄道の全ての車両が36-で始まります。
次の写真は車両のお腹にある心臓部、ディーゼルエンジンです。
6気筒の力持ちで最高時速95キロを叩き出します。
燃費はリッター2キロだそうで、燃料が高騰すると泣けてくるんだそうです。
そして僕が持っているのは、ホタテ貝の貝殻。
恋し浜駅の待合室に祈願成就の絵馬として、多くのお客様が願い事を書いて掛けて行きます。
恋愛のパワースポット恋し浜ですからね、やっぱり恋の願掛けが多いみたい♡
小石浜で養殖されている『恋し浜ホタテ』というブランド貝の貝殻ですよ。
ん?あれ、小石浜?
元々は小石浜駅だったのですが、平成21年7月に『恋し浜』に名称を変更したんだそうです。
全国に“恋”の付く駅ってこの恋し浜を含めて四つしか無いんですって。
さて今回はここまで。
もう少し三陸鉄道ブログにお付き合い頂くと致しましょうか。
どなた様もお乗り遅れのございません様に♪
つづく。