稽古場から



ね、ちゃんと稽古してるでしょ?
    

彼が演出家のニックさん。
    

英語がとっても上手!
    

まさに今、演出中(ヤラセ無し)
    
    


演出家が役者にとやかく言う事を日本語では
“ダメ出し”
と言うのはもうご存知の方も多いと思いますが、
改めて考えると何だかネガティブな響きだと思いませんか?
    

ダメ出し
    

『そこの台詞ダメ!』
『そこの動きダメ!』
『そこの表情ダメ!』
『てゆーかその顔ダメ!』
ダメな所ばかりを指摘して役者を凹ます…
訳でもありませんが、もちろん褒める事も含め、
昔から演出家から役者への要望、注文全般を
“ダメ出し”
と言ってきました。
    

これは僕の知る限り、舞台に限らず業界全般で使われています。
    

遥か昔の養成所時代、ひと言台詞を言っただけで
その人の生き方までこんこんとダメ出しされて
落ち込んでいた先輩がいました。
    


はて?イギリスではこのダメ出し、なんて言うのかしら…
やはりネガティブな言い方をするのかしら?
疑問に思い、ニックさんに聞いてみたところ、英語では
    

“Note”
    


と言うんですって。
『低燃費系でビュンビュンだめ出しする系』
と言う意味ではありません。

元の意味は『知らせる物・事』だそうで、
それが転じて『覚書・メモ』と、
皆さんご存知のノートになっていく訳であります。
    

成る程ね、とってもストレート。
    

確かにニックさんの演出にはダメを出されている感じがしない…。
ダメ出しの冒頭、まず最初に
『OK OK Nice!』
『Good Very Good!』
『Excellent!』
前置きと言うか枕と言うか季語…季語はないだろ!
とにかく役者をノセてからダメ出しを始めるのです。
    

ニックさんはホントにノセ上手。

役者が
『いやぁそれ程でも♪』
とのぼせてる間に
『デモッテココハモウスコシハゲシク』(英語で)
『デモッテココハモットヤサシク』(英語で)
と的確に指示していくのです。
    

ノセられて気分のいい役者の心は大変広くなっています。
『OK♪ 了解♪ アハン♪ 分かりました♪』(英語日本語ごちゃまぜ)
と何でも聞き入れちゃうんですな。
    

稽古が終わる頃にはすっかりハッピーになって
『オレってNiceなんだ♪』
『アタシってExcellentなのね♪』
と夢心地で帰途につく訳です。
    
    

ノセるのが上手いのは外国人演出家に多く見られる特徴の様です。
    

日本の演出家ではお目にかかった事はありません。
中には
『このヘタクソォ〜ッ!』と灰皿を投げる演出家もいらっしゃる様ですが、
何処もかしこも禁煙になった今、果たして何を投げているのか…
気になります。
    
     


ま、いっか。
    
    

しかしニックさん、ただのノセ上手ではありません。
    

初対面の時、
『ワタシィ、ヒルァタサンノォアルジャーノンミマスィタァ
コノブタイモォタノスィミニィシテイマァス♪』(もちろん英語で)
    

ガツンと必殺先制カウンタープレッシャーを頂きました。
    

恐るべしニックさん!
初っ端からしっかりと手綱を握られています。
    
    

ブログ用の写真に快く応じてくれたニックさん、
『厳しく叱ってる風情で』
とお願いしたら、通訳が付かないのをいい事に
撮影中ずっとノリノリで罵倒してくれました…。
    
    
    
    


英語分かんなくてよかった♪
    
    
    


Posted at 2009年05月30日 [土] 13:13 | カテゴリー:舞台 |